抗菌薬適正使用支援(Antimicrobial stewardship;AS)プログラムを実践する戦略には、対象とする集団を決めることが望ましいとされています。その集団には特定の広域抗菌薬や血液培養陽性患者といった医薬品や検査を起点とする場合だけでなく、特定の患者背景や合併症をもつ特殊集団・特殊病態患者(いわゆるスペシャル・ポピュレーション)の場合も含まれます。
スペシャル・ポピュレーションでは、生理機能や代謝機能の変化が抗菌薬の薬物動態に変化をもたらすことが知られています。そのため感染症治療では、抗菌薬の薬物動態変化を考慮した投与量設計、薬物相互作用の予測・回避、副作用モニタリングなど、患者一人ひとりへの抗菌薬治療の最適化が重要であり、ここに薬剤師の果たす役割は大きいものがあります。一方、こうしたスペシャル・ポピュレーションでは、注意すべき点や関与すべき点がそれぞれ異なることから、躊躇する薬剤師も多いことが現状です。
そこで、本増刊号では日常臨床で遭遇するさまざまなスペシャル・ポピュレーションに対して抗菌薬を適切に使用する際の考え方について、各領域のエキスパートが解説します。ASに関わる薬剤師だけでなく、病棟担当者などすべての薬剤師にとって有益な1冊です。